腰部脊柱管狭窄症における後遺障害のポイント

1 本当に、腰部脊柱管狭窄症の確定診断がなされているのか?

被害者のMRI画像所見は、変形性頚椎症=変形性脊椎症に類似しています。
また、訴える症状は、脊髄の圧迫が主であれば脊髄症を、神経根の圧迫が主であれば神経根症を、さらには、両方の症状を示すこともあり、この点、変形性脊椎症、頚椎症性脊髄症=脊椎症性脊髄症に酷似しているのです。

実際の臨床の現場では、緻密な検証がなされないまま、「おそらく脊柱管が狭窄気味かな?」という形で脊柱管狭窄症と診断されていることが多い傾向にあります。
それゆえ、MRI画像を取り寄せた上で自身でも脊柱管の前後径を計測し、本当に12mm以下であるかを検証する必要があるといえます。

医学では、変形性脊椎症は、一定の年齢に達すれば誰にでも認められるもので、特徴であって、疾患、つまり病気ではないと断言しており、さらに、東京・名古屋・大阪の3地方裁判所は、年齢相応の変性は、素因減額の対象にしないと合議しているのです。このことは頸椎に関してではありますが,前の記事でも言及しました。
医師と裁判官が言い切っていても、保険屋さんは、脊柱管狭窄症の傷病名を確認すると、事故によるものではないと断定し、任意一括対応を中止としているのです。
つまり、加害者の不注意よりも、被害者の年齢変性が悪いとしているのです。

事故前に症状がなく、通常の日常生活をしており、頚椎症で通院歴がなければ、事故後の症状は、事故受傷を契機として発症したと考えればいいのです。
したがって、「本当に脊柱管狭窄症なのか?」という点を疑って掛からなければなりません。

2 脊柱管狭窄症が交通事故以外の原因で生じた場合

そうは言っても、脊柱管狭窄症が交通事故を原因として発症するものではありません。
事故前に症状があって、本当の脊柱管狭窄症と診断され、通院歴のある被害者は、一定の素因減額を覚悟しなければなりません。
やや古い判例ですが、大津地裁判決H11年2月17日は、59歳の男性に対して、事故自体は比較的軽微であるも、腰部脊柱管狭窄症、心因的要因などを理由に請求額の50%を損害として認めています。

厚生労働省は、広範脊柱管狭窄症を公費対象の難病と指定おり、以下の条件を満たせば、治療費は国庫負担されています。

①頚椎、胸椎または腰椎のうち、いずれか2つ以上の部位において脊柱管狭小化を認めるもの。
ただし、頚胸椎または胸腰椎移行部のいずれか1つのみに狭小化を認めるものは除く。

②脊柱管狭小化の程度は画像上、脊柱管狭小化を認め、脊髄、馬尾または神経根を明らかに圧迫する所見があるものとする。

③画像上の脊柱管狭小化と症状との間に因果関係の認められるもの。

④鑑別診断で、以下の傷病名は排除されています。

  神経学的障害を伴わない変形性脊椎症、
  椎間板ヘルニア、脊椎脊髄腫瘍、
  神経学的障害を伴わない脊椎すべり症、
  腹部大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、
  末梢神経障害、運動ニューロン疾患、
  脊髄小脳変性症、発性神経炎、
  脳血管障害、筋疾患、
  後縦靭帯骨化症 、黄色靭帯骨化症
※後縦靭帯骨化が症状の原因であるものは、後縦靭帯骨化症として申請すること、
※本症の治療研究対象は頸椎と胸椎、または頚椎と腰椎、または胸椎と腰椎のいずれかの組み合わせで脊柱管狭窄のあるものとする。

⑤運動機能障害は、日本整形外科学会頚部脊椎症性脊髄症治療成績判定基準の上肢運動機能Ⅰと下肢運動機能Ⅱで評価・認定されており、頸髄症では、上肢運動機能Ⅰ、下肢運動機能Ⅱのいずれかが2以下、ただしⅠ、Ⅱの合計点が7でも手術治療を行うときは認められています。
胸髄症・腰髄症では、下肢運動機能Ⅱの評価項目が2以下、ただし、3でも手術治療を行うときは認められています。  

    

上肢運動機能Ⅰ
箸またはスプーンのいずれを用いても自力では食事をすることができない
スプーンを用いて自力で食事ができるが、箸ではできない
不自由ではあるが、箸を用いて食事ができる
箸を用いて日常食事をしているが、ぎこちない
正常

※利き手でない側については、紐結び、ボタン掛けなどを参考とする。 ※スプーンは市販品であり、固定用バンド、特殊なグリップなどを使用しない。

    

下肢運動機能Ⅱ
歩行できない
平地でも杖または支持を必要とする
平地では杖又は支持を必要としないが、階段ではこれらを要する
平地・階段ともに杖又は支持を必要としないが、ぎこちない
正常

※平地とは、室内または、よく舗装された平坦な道路 ※支持とは、人による介助、手すり、つかまり歩行の支え

症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しないが、高額な医療を継続することが必要なときは、医療費助成の対象とされています。

これ以上の詳細や手続は、厚生労働省のホームページの指定難病(http://www.nanbyou.or.jp/entry/98)をチェックしてください。

四ツ橋総合法律事務所では、厚生労働省に対する難病指定と治療費の国庫負担についての申請にも対応しております。
被害者が安心して療養できるように、サポートを続けています。

3 認定される後遺障害について

脊柱の固定術等が実施されたときは、脊柱の変形等で11級7号が認定されます。
脊柱の可動域が、2分の1以下に制限されていれば、8級2号が認定されています。
保存療法にとどまるものの多くは、12級12号の認定ですが、四国の愛媛県で、脊髄症状として7級4号を認めたものがあります。

4 注意点について

受傷直後は、頚部捻挫の傷病名で、長期の治療が継続され、最終的に脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症、頚腰部椎間板ヘルニア等の傷病名で、脊柱管拡大形成術に至ったものについては、損保料率機構調査事務所は、すべての治療先に症状照会を行い、自覚症状や他覚的所見などから、事故との因果関係を否認して等級を認定しないものが激増しています。

症状照会の用紙のタイトルは、以下の2種類です。
「神経学的所見の推移について」
「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」

四ツ橋総合法律事務所では、後遺障害診断の段階で、これらの用紙を提出し、記載の上、カルテに挟み込んで、いずれ実施される症状照会に備えています。  


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